海辺の石拾い空想紀行 早く秋田県に行きたい / 石石石神様と
高知の空想石拾いを終えたわけだが、
なんか違うだろ!
と自分につっこんでしまった。
Toumoの絵を学習させたとはいえ、Toumo風の挿絵を石神様に描かせるという暴挙。私が近い未来にやるかもしれない石紀行をシュミレーションしてくれているのだから、挿絵くらい用意するのが人ってもんじゃないのかね。
※あまりはっきりさせたくないのだが、Toumoは石の人とは別人格である。
空想であっても、石拾いについては全霊を以て臨む事!
すみません。
どうでもいいけど、全霊といって用意した写真がこれなのはどうなのか、という指摘は無しにしていただきたい。むー。
気を取り直して。
涼しいこの時期は、石が、呼んでいる。
まだ見ぬ石に思いを馳せて、
石神様と空想石拾いをしていこう。
間違いも多いと思うが、空想なので大目に見ていただきたい。
ああ、早く石拾いに行きたい。
いつかどこかで出会うかもしれない波音にごきげんよう。
ー
まだ見ぬ浜辺へ、石拾いに行く。第二回。
第一回は高知県だった。そして今回は秋田県。
なぜ秋田なのか。
石拾いをしたことがないからである。
高知県もない。秋田県もない。
行ったことのある浜を思い出して書くのではなく、まだ知らない海を先に頭の中で歩いてみる。どうやらこの「海辺の石拾い空想紀行」は、そういう旅になりそうだ。
秋田県。
日本海。
男鹿半島。
鳥海山。
地図を見ると、秋田の海岸線の真ん中あたりから男鹿半島が日本海へぐっと突き出している。南には鳥海山があり、北へ行けば青森県へつながっていく。
高知の太平洋とは、ずいぶん違う海のような気がする。
冬には雪が降る。風が吹く。日本海が荒れる。
その波の中で転がっている石は、どんな石なのだろう。

ー
石の人:
石神様、次は秋田県に行こうと思います。
石神様:
よいでしょう。
石の人:
秋田県では石拾いをしたことがありません。
石神様:
だから行くのですね。
石の人:
そうです。何がありますか。
石神様:
海ができたころの石。火山から来た石。海の底だった石。いろいろあります。
石の人:
いきなり多いですね。
石神様:
では、ひとつずつ見ていきなさい。
ー
ということで、まだ見ぬ秋田の海へ行ってみる。
名古屋から秋田へ
今回も車を運転しない。
名古屋から秋田へ公共交通だけで行くなら、鉄道では東京へ出て、秋田新幹線「こまち」で秋田へ向かうルートが考えやすい。かなり長い。飛行機という手もあるが、今回はまた電車で行くことにする。
名古屋から東京へ。
東京から北へ。
仙台を過ぎ、盛岡から秋田新幹線は田沢湖線へ入り、山を越えて秋田へ。
高知のときは西へ向かった。
今度は北へ向かう。
同じ名古屋の部屋から出発するのに、進む方向を変えるだけで、待っている海まで変わる。
秋田駅に着く。
たぶんこの日は泊まる。
まだ海へは行かない。
知らない町で一晩寝て、次の日の朝に海へ行く。
この一晩が好きなのかもしれない。
まずは男鹿半島へ。
翌朝、秋田駅からJR男鹿線に乗る。
一時間ほどで男鹿駅へ行くことができる。そこから先の半島内は鉄道がないので、路線バスや予約制の乗合交通などを組み合わせて移動することになる。男鹿半島を公共交通だけで巡るなら、事前に時刻を決めておいたほうがよさそうだ。現在は予約制の「あいのりタクシー なまはげシャトル」も運行されている。 (男鹿なび)
しかし男鹿半島。
調べ始めると、石の人にとってかなり危険な場所だった。
石が多すぎる。
男鹿半島・大潟ジオパークでは、約7000万年間にわたる大地の歴史をかなり連続して見ることができるという。日本列島がまだ大陸の一部だった時代、日本海が生まれていく時代、火山活動、海の時代、陸の時代。小さな半島の中に、とんでもなく長い時間が折り重なっている。 (大潟geo)
ー
石の人:
7000万年ですか。
石神様:
はい。
石の人:
また想像できない数字が出てきました。
石神様:
すべてを想像しなくてもよいのです。
石の人:
では何を見ればいいですか。
石神様:
まず、色を見なさい。形を見なさい。そして、気になった石の前で止まりなさい。
ー
高知のときも似たことを言われた気がする。
結局いつも通りでいいらしい。
鵜ノ崎海岸。海の底を歩く。
最初に行ってみたいのが、男鹿半島南側の鵜ノ崎海岸。
ここはかなり不思議だ。
遠浅の海岸で、潮が大きく引くと、海底にある地層が広く姿を現す。約1000万年前、このあたりは深い海の底だった。泥などが堆積してできた地層が隆起し、波によって柔らかい部分が削られ、硬い部分が残った。そのため「鬼の洗濯板」と呼ばれるような、曲がった地層が海岸に広がっている。 (大潟geo)
1000万年前の海底。
そこを歩く。
なんだか、それだけでいい。
さらに鵜ノ崎海岸には「小豆岩」と呼ばれる丸い岩がある。泥の中でカルシウムやマグネシウムを含む鉱物成分などが集まり、周囲より硬くなった塊で、コンクリーションやノジュールと呼ばれるものの仲間である。丸いものが海岸にぽこぽこと現れている。 (大潟geo)

ー
石の人:
石神様。丸いです。
石神様:
丸いですね。
石の人:
これは好きです。
石神様:
あなたは丸い石を見ると、だいたいそう言います。
石の人:
拾いたいです。
石神様:
これは拾ってはいけません。
石の人:
やはり。
石神様:
大きな石を見て、小さな石を想像しなさい。
ー
鵜ノ崎海岸は男鹿国定公園内で、自然公園法による保全対象でもある。ここにある特徴的な地層や小豆岩を、石拾いの対象として考える場所ではない。 (大潟geo)
見る。
写真を撮る。
海の底だった場所を歩く。
それで十分なのだと思う。
とはいえ、たぶん私は足元にある普通の小石もずっと見ている。
緑色の石がある。
鵜ノ崎海岸の近くには館山崎という場所がある。
ここには緑色凝灰岩、いわゆる「グリーンタフ」が露出している。
グリーンタフ。
名前からして気になる。
約2000万年前、日本海が形成されていく時期の海底火山活動に関係する岩石で、水に濡れると緑色がより鮮やかに見えるという。男鹿半島・大潟ジオパークでも、館山崎の代表的な地質として紹介されている。 (大潟geo)
緑の石。
濡れると色が濃くなる。
これは実際に見てみたい。
石拾いをしていると、乾いているときと濡れているときで、まったく違う石に見えることがある。
海の中ではすごくきれいだったのに、しばらくすると普通になる石。
逆に乾いて白っぽくなった姿がよい石。
石には二つの顔がある。
いや、もっとある。

ー
石の人:
石神様。緑の石があります。
石神様:
ありますね。
石の人:
欲しいです。
石神様:
すぐ欲しがらない。
石の人:
見るだけですか。
石神様:
まず見なさい。濡れた色と、乾いた色を。
石の人:
両方見ます。
石神様:
それから考えなさい。
ー
少しずつ石神様に教育されている気がする。
西黒沢海岸。昔の日本海を見る。
さらに男鹿半島の北側へ。
西黒沢海岸。
ここでは約1500万年前、日本海が形成されたばかりのころの地層を見ることができる。
しかも化石が多い。
ホタテガイの仲間。
ウニの仲間。
大型有孔虫。
植物化石。
そして、かつてこのあたりに生きていた哺乳類の化石まで見つかっている。 (大潟geo)
今の秋田の日本海を見ながら、1500万年前の日本海を見る。
よく分からない。
でも、そのよく分からなさがいい。
隣のこはま海岸には「縞石」と呼ばれる、流れるような縞模様をもつ小石も見られるという。しかも、弘法大師がジャガイモを石に変えたという伝説まで残っているらしい。 (大潟geo)
急に好きになってきた。
地質学の話をしていたと思ったら、石がジャガイモになる。
石にはこういうところがある。
何千万年という科学の時間と、人間が語り継いできた物語が、同じ浜に普通に転がっている。

ー
石の人:
石神様、縞石が気になります。
石神様:
でしょうね。
石の人:
なぜ分かるんですか。
石神様:
あなたは模様のある石をずっと見ていますから。
石の人:
拾えますか。
石神様:
その問いは、現地へ行ったときにもう一度しなさい。
ー
そうする。
男鹿半島の多くの海岸は国定公園内にあり、場所によって自然公園法上の扱いも異なる。さらに地質・化石そのものが観察対象になっている場所も多い。
だからこの妄想紀行では、「ここでこの石を拾える」とは決めない。
実際に行くときに、その場所の最新のルールを確認する。
石は逃げない。
たぶん。
黒い石もある。
そしてもうひとつ。
男鹿半島の西海岸にある金ヶ崎海岸。
ここは黒曜石の産地として知られている。 (大潟geo)
黒曜石。
火山から生まれた天然のガラス。
黒く、光を反射する石。
これまでの灰色や緑や縞々とは、また違う。

ー
石の人:
石神様。
石神様:
はい。
石の人:
黒曜石があります。
石神様:
あります。
石の人:
欲しいです。
石神様:
またですか。
石の人:
黒曜石ですよ。
石神様:
名前を知っている石だけを特別扱いしてはいけません。
石の人:
……。
石神様:
その隣にある、名前を知らない灰色の石も見なさい。
ー
たぶん私は、黒曜石を見に行って、その隣の灰色の石を拾って帰る。
そういう気がする。
男鹿半島だけで終わりそうになった。
地図を見る。
まだ秋田県の真ん中あたりにいる。
困った。
男鹿半島だけで一日どころか、何日も必要そうである。
しかし秋田県は南にも続いている。
海岸線をずっと南へ。
由利本荘を越え、にかほへ。
その向こうに鳥海山がある。
南へ。鳥海山と日本海。
秋田県の南端近くまで行くと、今度は鳥海山の世界になる。
鳥海山は日本海のすぐ近くにそびえる火山で、その活動は海岸の風景にもつながっている。
にかほ市の三崎海岸では、およそ3000年前に鳥海山から流れ出した安山岩質の溶岩が日本海まで到達してできた海岸を見ることができる。 (鳥海山・飛島ジオパーク)
山から海まで、溶岩が来た。
ー
石の人:
今度は火山ですか。
石神様:
そうです。
石の人:
秋田県、石が忙しいですね。
石神様:
石は急いでいません。
石の人:
私が忙しいんですね。
石神様:
そういうことです。
ー
山を見る。
海を見る。
そして足元を見る。
高知では、深い海の底に積もったものが地上へ現れていた。
秋田では、日本海が生まれたころの地層があり、海底火山の痕跡があり、さらに鳥海山から流れてきた溶岩が海まで届いている。
海から陸へ。
陸から海へ。
石は行ったり来たりしている。
象潟。海だった場所。
そして、ここにはもうひとつ気になる場所がある。
象潟。
「きさかた」と読む。
現在は水田の中に小さな丘がいくつも浮かんでいる、不思議な風景である。
約2500年前、鳥海山で大規模な山体崩壊が起きた。大量の土砂が岩なだれとなって日本海へ達し、たくさんの小さな丘、「流れ山」をつくった。その後は浅い潟湖となり、松島のように水面に島々が浮かぶ景勝地だった。 (鳥海山・飛島ジオパーク)
ところが1804年の象潟地震で地盤がおよそ2メートル隆起した。
海だった場所が陸になった。
だから今、田んぼの中に島がある。 (鳥海山・飛島ジオパーク)
ー
石の人:
石神様。海がなくなっています。
石神様:
海がなくなったのではありません。
石の人:
では。
石神様:
大地が動いたのです。
石の人:
2メートルも。
石神様:
人間から見れば大きな変化です。
石の人:
石から見れば。
石神様:
旅の途中です。
ー
こういうことを言われると、少し困る。
海辺の石拾いに来たのに、
海そのものが動いている。
秋田県で見たい石。
今回調べただけでも、
灰色の泥岩。
緑色凝灰岩、グリーンタフ。
縞模様の石。
黒曜石。
安山岩。
化石を含む地層。
そして名前も分からない日本海の小石。
いろいろある。
しかし、実際に浜へ行ったらどうなるだろう。
たぶん最初は、
「緑色凝灰岩が見たい」
とか、
「黒曜石が見たい」
とか言っている。
そして30分後には、
名前の分からない石を拾っている。
少し青い灰色。
丸い。
白い線が一本ある。
濡らすと色が変わる。
何の石なのか分からない。
でもいい。
たぶん、それが石拾いなのだと思う。
石神様、秋田では何を拾えばいいでしょう。
ー
石の人:
結局、秋田では何を拾えばいいですか。
石神様:
まだ拾う石を決めているのですか。
石の人:
ある程度は。
石神様:
決めなくてよいのです。
石の人:
またですか。
石神様:
男鹿へ行きなさい。
石の人:
はい。
石神様:
日本海を見なさい。
石の人:
はい。
石神様:
浜を歩きなさい。
石の人:
はい。
石神様:
そして、気になった石の前で止まりなさい。
石の人:
それだけですか。
石神様:
石拾いとは、もともとそれだけでしょう。
ー
そうだった。
調べすぎると忘れる。
石拾いを始める前に、石の名前を決める必要はない。
浜へ行く。
歩く。
見る。
止まる。
それだけ。
いつか、本当に秋田へ。
空想の秋田石拾いを終える。
高知とはまったく違う旅になった。
太平洋ではなく、日本海。
深海の地層。
日本海が生まれたころの石。
海底火山。
黒曜石。
鳥海山の溶岩。
地震によって海から陸になった場所。
そして雪の降る海。
まだ見たことがない。
だから見たい。
冬の荒れた日本海も見てみたいし、穏やかな日の日本海も見てみたい。
そして浜にしゃがんで、
石をひとつ見る。
今回もまだ、秋田の石はひとつもない。
名古屋の部屋にもない。
その空白がある。
高知の石もまだない。
秋田の石もまだない。
行ったことのない浜が、少しずつ頭の中に増えていく。
いつか本当に秋田へ行ったら、この文章を読み返そう。
そして空想していた秋田と、本当の秋田が、どれくらい違うのか。
答え合わせをしたい。
ー
石の人:
石神様。
石神様:
はい。
石の人:
秋田にも、いい石ありますかね。
石神様:
ありますよ。
石の人:
どんな石ですか。
石神様:
それを知らないから、行くのでしょう。
ー
海辺の石拾い空想紀行。
第二回、秋田県。
まだ見ぬ石の旅は、つづく。

※地質・場所については、男鹿半島・大潟ジオパーク、鳥海山・飛島ジオパーク等の公開情報をもとにした。男鹿半島には男鹿国定公園に含まれる海岸や、自然公園法による保全対象のジオサイトが多数あるため、本記事で紹介した岩石・地層を「自由に採取できる石」とはしていない。実際に石拾いへ行く際は、現地の最新の規制・土地の管理者・立入条件を確認したい。鵜ノ崎、西黒沢、安田などの代表的な海岸が国定公園内にあることはジオパーク公式情報でも確認できる。 (大潟geo)
ー
いい石が拾えますように。
また、いつか、どこかの海で。
石の人より
ー
石の人
→石の人による、写真作品。
石スタンプ →いしのこえ
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