石川の海で石拾い、うねうね壺石 前編 |思い出その百二十|

TADAとの石拾いを14日に終え、家に帰ると思いきや、写真を整理しているとそうでないことを思い出した。
福井のホテルに泊まり、翌日チャリズムANDOなる男と福井駅にて待ち合わる予定があったのだ。

翌朝。
2022年11月15日。
ANDOから連絡がある。乗ろうと思っていた電車が何かの理由で動いていないというのだ。高速バスに乗り、いや、結局遅れて電車で来たのかはおぼえていないがなんとか無事福井駅に着いたと連絡があった。

チャリズムANDO。一体誰なんだ。この謎の男は。
最初の出会いは会社だ。私の働くデザイン事務所、この日記でも度々出てくるデザイナーEもここで働いている。社員旅行で福井に石拾いにも行った。それよりもはるか前、ANDOは同期のコピーライターとして入社している。
年齢は私より五つほど上で、謎多き男。
なぜチャリズムかというと、ANDOが大学時代に友人二人とチャリズムなるチームを結成する。その活動はママチャリで日本一周するというものだ。一年目の夏休み、北へ、二年目に南へ、そしてその後中華人民共和国を横断。なんだその活動は。しかもママチャリ。ただ走るだけではなく、毎日日記をそれぞれのメンバーがそれぞれに書き、一冊の本として文化祭で販売したらしい。
ちなみにANDOはまったく石に興味がない。だが、その旅と日記、何か私は通づるものを感じてしまい、また彼は日頃働きたくないと言い続けている。働きたくない。旅人が彼にはぴったりだと思った。
だが、彼も一人の人間。食っていくには働かねばならず、そして社会参加が必須である。不幸なことに今の世に彼にあった仕事は多くはない。まず新卒で営業職に就き、辞め、コピーライター志望で私のいるデザイン事務所に入社した。しかし社風になじめず、いやなじんでいたのだが少々がさつな性格から度々問題が発生し、辞めざるを得ない状況となる。
実は、理由はもう一つあった。

ひとまず福井駅で集合し昼食をとることにする。レンタカーを走らせながら福井名物の店を探し、おろしそばの老舗のようなそうでないようなそこそこ評価の高い店を見つけたのでそこに入ることにする。
私はTADAと散々福井で石拾いをしているため、名物おろしそばには何も感じない。いつもと変わらぬ昼食だ。ANDOは嬉しそうに蕎麦をすすっている。食べ方が汚い。少々がさつだからだ。そして、尋常じゃない量のお茶をがぶがぶ飲んでいる。店のポットが取り替えられる。ごくごくごくごく。
ここに来るまでの車中でも大量の水を飲んでいた。何の競技だ。

これが、会社から追放されたもう一つの理由である。水の摂取量オーバー。
彼は会社のウォーターサーバーの水をガロン単位で消失させる。水。水。水。これは一体どういうことか。私は一旦、ANDOを水依存症とした。

おろしそばを食べた後に、蕎麦湯と羊羹をいただいた。美味。
ANDOはお茶をかぶがぶがぶがぶ。
店の茶が消失する前に、出ることにした。

再び車を走らせ、ANDOに石拾いのプランを話すと、今日はいかないと言い始めた。話しが違う。福井に来たのだから、福井を観光したいと。それはわかる。ただ石拾いを全くしないなんてことは私の旅行にあってはならないのだ。

今日の運転者はANDOであり、主導権をにぎられていた。そして遠くから見えてきた白亜紀の生物。ああ、、。

ああ、、。恐竜博物館にいくんだね。

ようこそ。

ガオギャーーーン。

なぜ恐竜を見なければならない。我は石神様に遣わされた石の人なるぞ。こんなところで道草食ってる時間はない。出るぞ。

ガオギャギャーン。

おい、一体どうしてくれる私の石日記。石じゃなくて恐竜の化石。そしてこのサイズ、この恐竜。どうせレプリカだろう。違ったらごめん。

チャリズムANDOはいうことを聞かない。それが会社追放の3つ目の理由である。いや、聞かないのではない、聞けない。いや、わかっていない。ANDOは私のいる会社を去ったあと、東京の会社で働くことになる。そこでは営業職となる。営業。彼には向いてないと思った。彼は悪い意味で豪快だ。繊細な仕事ができない。一応フォローしておくと人間性は素晴らしいし、実は気を使うこともできる。そういう意味では私よりも随分社会適合しており、心も清らかである。しかし、なんだろうか、それが伝わらないくらいにがさつなのだ。そして水を消失させる。

!!!!!

石が突然現れた。それもくら寿司よろしくまわっている。びっくら石。
ANDOは恐竜の骨の形をしたレプリカばかり見て石に全く興味を示さない。

ANDOは東京の会社からも追放された。水をガロンで消費したからだ。
名古屋に戻り、謎の広告代理店で働き始める。コピーライターと思いきや、また営業職だ。やめろ。あなたには向いてない。がさつともう一つ、おそらくパソコンが向いていない。デスクワークが向いていない。昭和のパソコンのない時代の営業として、魂と魂のぶつかり合い、足で取る仕事、飲みの接待、憎めないやつだと仕事がなぜか舞い込んでくる。そんな違う世界線の営業だったらまだ良かっただろう。彼は、すぐ旅に出たほうがいい。そしてお金はなくとも何とかなる。そんな予感だけはするANDOなのだ。

いままで福井に来て一度も恐竜博物館に入ったことがなかった。TADAの地元であり、二人とも石拾いしか頭にないので選択肢になかった。
サラブレッドKや384と来た時も石拾いが優先され来たことはなかった。恐竜博物館は内陸部に位置し、海沿いの石拾いスポットから遠く離れてしまうからだ。今思えば、二人にはずいぶん石拾いを強制していたことに気づく。そっちの方がひとでなし。ANDOは普通に福井を満喫しているだけだ。それにしても、恐竜博物館、こんなにも石があったとは知らなかった。

世界最大級のアマゾナイト。よくわからない。石を拾っているくせにその凄さがわからない。私は10年ほど石拾いと石並べを続けてきたが一年目と十年目で石の知識が全く変わっていない。そんなことあるのか。
ある。ひとはこれを怠惰と呼ぶ。

もこもこもこー、
何だこの石は。

良い。こんな石が落ちていたら泣いてしまう。これで石拾いを終えてもいいと。

恐竜博物館を出て車を走らせる。さあ石拾い、と思ったがどう考えても時間的に間に合わない。というのも恐竜博物館に来ている時点で位置的に福井の石スポットはスルーしたことになる。このあと行くなら石川だ。しかし石川の石スポットに行くには時間が足りない。
終わり。
本日の石拾い終わり。
また次回。

そんなことがあっていいのか。ANDO。何とか言ってくれANDO。
ANDOは無視を続ける。なんてやつだ。ANDOは結局、この旅の後、謎の広告代理店からも追放される。理由は水である。

金沢おでん。気づけば石川に着いていた。
むしゃむしゃむしゃ。

うまそうにビールを飲むANDO。ペースが早い。
ベロベロベロベロ。

締めのらーめん。
ついに石を拾わず締められてしまった。

ANDOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO。

翌朝。
2022年11月16日。

どんどん時間が去っていく。福井と石川で石を一つも拾っていないことで、私は震えが止まらなかった。
あれ、、向こうに、、海が、、見える、、。

防風林。海だ。海なんだ。ANDO。今日も運転している。行きはANDO、ホテルへは私だ。やってしまった。またしても主導権を握られている。

海、やっぱり海だ。なんだ、ちゃんと石拾いも組み込んでくれるのか。やるじゃないかANDO。

ロケットがある謎施設についた。

ドーン。

なぜだ、なぜなんだ、、。あまりにもひどい、私の自由石が踏み躙られていく。

しかし、この博物館、無意味な公共施設と何が違うんだとなめていたが、どうやら違う。下記とのこと。

宇宙科学展示室では、アメリカ合衆国や旧ソビエト連邦が開発した宇宙船をはじめとする、様々な宇宙機材を間近で見ることができます。
この展示室では、ユーリ・ガガーリンによる人類初の宇宙飛行や、アポロ計画による月面着陸で活躍した様々な宇宙船が展示されており、入口から出口にかけて、人類の宇宙開発史を振り返ることができるように設計されています。
最大の特長は、“本物”が展示されていることです。海外製の本物の宇宙機材は、日本国内では希少であり、これだけ多くの本物が展示されている施設はコスモアイル羽咋だけです。来館者の方々からは、「なぜこれだけ貴重なものが能登半島にあるのか」と、驚きの声をいただくことが多く、宇宙ファンからは“穴場中の穴場”と評される施設です。
展示方法については、スミソニアン博物館による協力のもと、伝統的な日本の科学館の展示方式ではなく、アメリカの展示方式に近い形になっています。宇宙空間をイメージした薄暗い照明や、天井に吊るされたモルニア通信衛星など、展示物を美しく見せるための工夫が至るところに施されています。

最初、恐竜博物館のようにレプリカだらけなんだろう(本物もあります、すみません。)と思っていたのだが、なぜか石川のこんな場所に本物の宇宙船がずらりと並んでいるのだ。いったいどういうことだ。どうやって集めたのだ。

ただ、あまりにも石に関係がない。この日記、ここまで読んでいる方がいるのだろうか。確実にANDOのくだりで離脱しているはずだ。

ああ、、。いつになったら石拾いにいけるのだろうか。

でも、岩石惑星である地球があるから、私は石拾いができるのだなあ、と思ったり。

石も、元々は宇宙から来たものなんだよなあ、と思ったり。

土星の輪にも石はあるんだよなあ。

ああ、、、。

UFO!?

急に怪しくなってきた。そう、この博物館、前半はリアルな宇宙船やその史実をもとに構成されているのだが、後半急にオカルトチックで月刊ムーのような世界観が繰り広げられることになる。私はいっきにさめてしまい施設を後にする。

ことはなかった。むしろ好物だった。

円盤型とか葉巻型とかいろいろあると聞く。ムー。

本当に宇宙人、ないしはUFOは地球に飛来しているのだろうか。ないと思う。仮にあったとしてもなぜわざわざ見つかるようなことをする。地球に来ているということは、地球と比べてとてつもない文明の差があるからして、人間にばれるようなことは絶対にないと思うのだが、、わざとそうしているのかもしれない。

別の銀河に行くにはワープの発明が必要か、有機の生物であることを捨てるか、冷凍睡眠状態で無限に近い時間を過ごさなくてはならない。そんなことが可能なのか。可能であれば、我々からしたらそれはもう神のような存在である。そんなやつらがわざわざ地球に関与する理由が見当たらない。

地球外の石。月の石ではない。たしか。全く記憶がないが、またしても石に出会ってしまう。まだ海に一度も行っていないのに、二日連続で石に出会う。
気づいたらこの謎施設に引き込まれている自分がいた。ANDOはもう全て見終わって私を待っている。どうやらこのあと私がGoogleピン立てした石拾いスポットにいく予定らしい。
ANDOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO。

やるじゃないか、なのに私のせいでANDOの予定していた所要時間30分をはるかに超え、すでに2時間ほど経過していた。

なぜかレゴブロックで謎施設が再現されている。
なぜだ、なぜなんだ、なぜこの施設は私の好きなものばかりを並べている。早く、早くここから出なければ。

なぜ映画エイリアンのフィギュアが置いてあるんだ。さすがにこのタイプのエイリアンは話が違うだろう。

ET。しかもその左のフィギュアは何。よくわからない。もうやめてくれ、、。私の足をとめるのは、、。

ついにANDOに声をかけられ危険施設を抜け出すことに成功。


石拾いの旅|石川県の海岸

急に海。
ANDOはがんばった。しかし石はない。ここは千里浜なぎさドライブウェイ。観光スポットだ。
石はなくとも海にうれしくなって車を降りる。さらに奇跡的に石はないかと波打ち際をどんどん攻めていたら、足をやられた。不覚。石拾いのためのゴアテックスブーツの上部から海水と砂が侵入。石拾い前に私の足はジャリベチョになった。

どんどん北上し、目当ての海岸に向かう。なんだか曇っているのと、残された時間が少ないことで私は内心どきどきしていた。ただ、全て自分のせいであることもわかっていた。
散々悪口を書いてしまったが、ANDOは実はすべて計画済みだった。程よく観光し、石もある博物館で私の石の知識を深め、そして石拾いに行くというゴールデンプランを用意してくれていたのだ。世の中の企業よ、なぜ彼を追放する。少々水が消えてもいいじゃないか。

いい眺め、、だがなんとなく日が落ち始めている気がするのは気のせいか、ぜんぜん気のせいじゃない気がする。車をどんどん走らせ、何とか一つ目の海岸に近づいてきた。

海。ついた。

石、あり。
ああ、石神様。ANDO様。ありがとう。この瞬間が最高の喜びです。

ここで日記一旦休憩。

海で拾った石|石川県の海岸

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