神奈川の宇宙みたいな海岸で、ある作家と石拾い |思い出その百二十七の一|
2023年4月23日。
カレーを食べよう。
ある作家さんが来るまで、まだ時間がある。
いや、わざわざ時間をとって、この店にいるのだ。

少し店の外で待つ。
今日は天気がいい。気温もいい。石拾い日和だ。

石好きださんと三重に石拾いに行って、わずか二週間ほど。
また人と石を拾いに行くことになった。

石好きださんとは石好き同士、石の話が尽きなかった。そして会う前も石の情報交換など、やり取りがあった。
今日の作家さんは石拾いをしたことがないらしい。だから興味があるらしい。
そして、SNS上の活動以外の情報がほぼない。

つまり、私は初対面で石拾いを教える立場にあるのだ。とても不安だ。
石拾いは思ったよりも、いや想像通り地味な作業だ。石好きにとっては至福の時間も、石に興味がない人にとっては作業時間になる。
私の石の写真を見て興味を持っていただき、あんな石が海岸にごろごろ転がっていると思われていたら、それはとても残念なことになる。
海岸に降り立ち、目の前に広がる駐車場のようにグレーな無限の石群に愕然とするだろう。そして、これから数時間もここで石を拾うと思うと絶望する。

ああ、石神様。どうかそんなことにならないよう、ある作家さんには石の心があると約束してください。

そもそも初対面での石拾いはなかなかハードルが高くないか。
春巻きもぐもぐ。

この辛くて酸味のあるスープはなんというのだっけ、ど忘れしたが調べもせず飲む。食べる。

思い出した。トムヤムクンだ。と思ったけど辛いスープじゃなかった。
これは辛くない鳥のスープだ。しらん。
そして米。
ラーメンにライスが無料で付いてくる店があるとする。その時ライスが先に来て、この米をどう処理すればいいのか、ラーメンを待てと言うのか、ただ、どんどん冷飯に近づいていくのを見守れと言うのか。戸惑いが隠せない時がある。どうでもいい話だ。

この店はカレーと同時に米が来る。
マッサマンマッサマン。
心の中で祈りを捧げる。いい石と出会えますように。そしてある作家さんに石の心がありますように。
初めてマッサマンを食べた時は、衝撃だった。こんなにうまいカレーがあるのかと。最初、口に入れた時、こんなに甘いカレーで大丈夫かと疑った。しかしその後口に広がる旨みとほどよい辛味によって、私はマッサマンの虜となった。

グリーングリーンカレー。グリーン。グリーン。
また祈った。ある作家さんがぶちぎれて私に石を投げつけ全ての石を恨み続ける人生を送ることにならないようにと。

全て食べ終え、とても満たされた気持ちになり、その余韻に浸りながら花を見つめ風を感じ太陽光を浴びて、チルモードに入ろうとした。

チルモード。
チル。
モード。
入れるわけがなかった。そろそろ作家さんとの待ち合わせ時間だ。駅に向かわねば。ああ、憂鬱だ。

駅のベンチで待つことにした。インスタのDMしかやりとりする方法がないので、ここで待つしかない。
そもそも本当に来るのだろうか。くるくる詐欺ではなかろうか。
まあ来なければ私はただ石を拾うだけだ。むしろそれでいい。
というかそれでいい。
石の悪夢を見たくないので、思考がどんどん消極的になっていく。
ずーん。
石の人さんですか。
突然、目の前に謎の女性が現れた。
作家さんですか。