福井の聖地と青森の聖地はそれぞれに儚い。石拾いの心に霧。 |思い出その百二十八|
2023年4月23日。
TADAよ。ここはどこだ。
福井だ。
私はもう諦めていた。青森の石を超える石が拾える海岸。
そんなものは日本には存在しない。
十年前の、希望にあふれ石拾いをしていたころが懐かしい。

いつもと同じだ。福井駅に着いて、TADAの車に乗り込み、流れるように始まる石拾い。
近況報告はそこそこに、石の会話からの海岸へ。

何度繰り返したことだろう。いつまで続くのだろう。
石修行。春の石タイムリープ。
TADAとの福井での石拾い。
最初にTADAから福井の石の写真が送られてきた時は衝撃だった。
福井でもこんなに美しい石が拾えるのかと。

それからしばらくして初めての福井での石拾いで、美しい瑪瑙や色とりどりの小石を拾って並べた。
TADAが石に開眼したあと、驚異的なスピードで養われる石の目と心にも驚かされた。

サラブレッドKにも、とてつもない石の集中力を見せつけられた。

私はどうか。

初めての石拾い以降、満足のいく石拾いはできていない気がする。何度も訪れる福井の海岸。どんな石が落ちていて、どのあたりに集まっていて、どのように拾えばいいか、わかってくる。
しかし拾う石は初回を超えることはなかった。

これは、いまだにわからない。なぜなのか。
福井の海が変わったのか、私の心が変わってしまったのか。

一つ言えるのは、どの海岸でも、初回の石拾いが一番いい石を拾えるのだ。

そんなことあるのか。
ある。

これは客観的にみて、いい石を拾えてないのか、それとも拾えているが私の心がそう思えないのか。
そこまではわからない。

ただいい石かどうかとは、観測者がきめることだ。正解はない。
私がいいと思えていなければ、それまでだ。
石拾いの旅|福井県の海岸

海についた。
いつもの海。
私の石の心は霧がかっているのに天気は快晴だ。
福井で晴れはめずらしい。私には眩しすぎる太陽を見せないでくれ。

ざざざんざん。

ころ、、。
この海岸、年々石が減っている。正確には大つぶの石が減っている。
砂利や小石ばかりで、初回のころにはあった大きな石や瑪瑙がない。
海水浴場であるため、シーズンが近づくと石が退けられてしまうからだ。

しかし私はそのおかげで、小さな石探しの喜びを知った。
無限に広がる小宇宙。

ころころころ〜。

私は思い始めていた。
福井の石は素晴らしい。素晴らしいが青森の石は超えていない。
そしてどの海岸に行っても、私の心の高揚は青森の時のそれを超えることはなかった。

美しい。

ああ福井の石よ。

こんなにも美しいのに。

TADAよ。

ああTADAよ。

TADAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA。







行くしかない。

再び青森へ。

ころころころ〜。

水面がゆれる。
煌めく。
美しすぎる。






そろそろ行くか。とTADAが言った。
はい。
海で拾った石|福井県の海岸1

TADAが拾った石。
いい、、いいじゃないか。 そして、その厳選された石の数はなんだ。脅威の選定。
大きな瑪瑙も見える。

小粒な紫の石。TADAにしてはめずらしく、可愛らしい石。

模様を見るに、こちらが表のようだ。

また小粒な、瑪瑙。
その裏は、、

いい。
というかかなりいい。とてもいい。めちゃくちゃいい。ほしい。
ほしいほしい。
ほしい、、、
私の石をかるがる超えてくるTADA。
石拾いは数ではないのだ。

またまた小粒な瑪瑙。
なんだこの味わい深い模様は。

その裏もいい。白と半透明の織りなすなんとも言えない展開が、私の心をくすぐってくる。
ぐ、、、なぜ、なぜだ。なぜ私はこの石を見逃した。

ぐあっ。
ああああああ。
これは仏頭瑪瑙と呼ばれるものか。そうか。そうなのか。
仏頭のように半球状のものが集まり構成されたぼこぼことした表面の瑪瑙をそう呼ぶらしい。そうだった気がする。
おそらくそのかけらだろう。
博物館やうっかり行ってしまったミネラルショーでは見たことはあるが、海岸では初めて見た。

裏はこう。

私が拾った石。拾いすぎやろ。
私の未熟さが浮き彫りになる。
私は拾うかどうか迷ったらとりあえずキープする。そして最後に選抜する。なので選抜に時間がかかる。TADAがまだかといらいらしていないか気になる。

あらよりして並べる。
多い。

まだある。
どんだけあるんや。
選抜の結果がない。石日記失格。
天気にあわせて、心もようやく晴れてきて、思ったよりもこの海岸の石が良さそうなので、昼食を挟んでもう一度ここで石拾いをすることにした。

おろしそば。

ソースカツ丼とそうめん。どんだけ食うのか。
福井飯デジャブ。私の体の三分の一はおろしそばとカツでできている。
石拾いの力をつけるためよ。
高速でたいらげて、また海岸へ向かう。

場所を変えると、大ぶりな石もあった。
やはり、ここの海岸はいろいろな模様と色があり面白い。写真では全く伝わらない。というか石の群れはこんなものだ。厳選し拾った石だけを集めて並べると華やかに見える。
ただ、おそらく石の種類的にはそこまで多くないのではないかと推測しているが全くそんなことはないのかもしれない。多分違う。私が言いたいのは石は見た目が違っていても同じ成分である可能性があるということだ。

一見地味だが目を凝らすと広がる世界。

ころころころ〜。
海で拾った石|福井県の海岸2

また並べる。
さっきの石も混ざっている。

どん。

どどどん。

まだまだ拾うよ。
ころころころ〜。

TADAはもう石を拾っていない。さっきの石で満足したからだ。
石の選抜、見切りも早い。
それでいて素晴らしい石を拾えるTADAにわたしは嫉妬というか、数では敵わない石拾いの奥深さを知るとともにそのどうすることもできない石の壁と無慈悲さにまた落ち込み始めていた。
ああ、石神様、私は石聖にはなれないのですね。わかりました。
(いしひじり/石を極め、悟りを開いたもの いまだかつてそんなものはいない 私の妄想である。)
ふぁーふぁーふぁー。
ふぁー。

どんだけ拾うんや。

やめなさい。

もう十分です。

話を聞きなさい。

当時の私よ。

やめんかい。

何やら不思議な模様だ。

さらすべまっとなベージュの石。
シンプルだが美しい。
これにてこの海岸での石拾い終了。気がつけばまた楽しんでいた。
海で拾った石|福井県の海岸3

あらためてこんな感じ。
白バックの写真を流していく。






きらきらしている。きらきらしているよ、石たち。
コーラグミみたいな石がいい感じだ。
次回もTADAといつもの海岸その二へGO。
青森の日も近い。
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