神奈川の輝く宇宙海岸で石拾い、青と緑の石 |思い出その百二十七の二|
石拾いの旅|神奈川県の海岸
2023年4月23日。
引き続き、ある作家さんと石拾い。

作家さんの拾う石は美しい。
日頃発信されている作品と、どこか通ずるものがある。

きらきらきら〜
ころころころ〜

あまり作家さんの拾う石を意識すると私がいい石を拾えない。雑念を取り払え、雑念を。
今回の石拾いは、何かが違うことに気づいた。
そうか。
TADAと拾う時、384やサラブレッドKと拾う時もそうだ、
石好きださんの時もそうだった。
いつもなら、海岸に着くや否や、石をもくもくと拾い始める。
さあ、拾いますか。みたいな合図は一切ない。着いた途端みんな石拾いモードに切り替わるのだ。
そして我先にいい石を拾ってやろうと、(これは私が意識しているだけ)
いい石がありそうなところをいち早く見つけようとする。
なぜなら手練れが集まる石拾いでは、誰かが通ったあとにいい石はもうない。それくらいシビアなのだ。(これは私が意識しているだけ)
石好きと石拾いに行きたいのだが石好きと行くといい石が先に取られることがあるのでそれは困る。石の争い。心の中で。これは複数人での石拾いの永遠の課題である。
(これは私が意識しているだけ)

作家さんとは道中から話し続け、海岸に着いてからも話しながら流れるように石拾いが始まっている。つまり作家さんと横並び、あるいは前後で石拾いをしているのだ。

これはまずい。かなりまずい。
なぜなら、まず私が知る限り最速記録で開眼した作家さんの拾う石が気になりすぎる。
そして話しながら近くで拾っているので石の取り合いになるかもしれない。
今までの石拾いの戦いは、拾った後に見せ合う戦いだ。今回は拾いながら争いが起きるかもしれない。そうなったら最悪だ。

数少ないが何度か経験がある。
TADAなどと近場を歩いていて、あっ!と二人とも目立つ石を目の当たりにする。それをどちらかが先にひょいと拾い上げる。その石がとてもいい石だった場合、なぜもっと早く気づかなかったのかとめちゃくちゃ後悔するのだ。
ただここは大人同士。それは先にこっちが見つけただの、譲ってくれやみたいなやりとりはない。
拾った者は心の中で、
よっしゃー。よっしゃー。しゃーしゃーしゃー。
拾い損ねた者は、ひたすら心の中で、
その石ええなあその石ええなあええなあええなあ。ええ。ええ。なあ。なあ。
欲しいとは絶対言えない。

ましてや初対面の作家さんとそんな醜い争いをすることはできぬ。
一通りお互いのことを話し終えたので、それぞれの石拾いを楽しむこととなった。
これで一旦集中できる。石集中。

ころころころ〜

この海岸、いつも出張ついでに行くことが多いので、大体は一人で訪れてる。とても長い海岸で石が無限にあり、いつまでも無心で拾っていられる海岸なのだが、

どうも作家さんが拾っている石が気になる。

やはり石は一人で拾うのがいいのだろう。

孤独な石拾い。

石の人のプロフィールでは、石拾いとは、
「不思議と癒しと孤独が織りなす石拾いの思い出」
としている。

そう、孤独が重要なのかもしれない。

ころころころ〜

ファーファーファー(鳥の声)

ざざざんざん

ここの石はとても硬くすべすべなので、波打ち際で濡れた石たちはきらきらと輝く。

美しい。
十分石を拾ったので作家さんと石を見せ合うことに。
というか、作家さんの石が気になりすぎて、切り上げたのだ。
海で拾った石|神奈川県の海岸

私が拾った石は、こんな感じ。
悪くない。むしろいい。いい。何度も紹介しているこの海岸だが、青緑の石、白っぽい石、たまに肌色茶色の石が転がる。そのバランスがなんとも絶妙で、何度行っても飽きることはない。

台風のよう。

まるっこくて可愛らしい石。

バイカラー。

これはなんだろう。
つやつやした石。
たまにある、写真を見返してなぜ拾ったのかわからない石。

夕暮れ、水平線と空のよう。

もやもや。

キャラメルのよう。

淡い三本線。

白い点々。宇宙のよう。
このような水玉石、この海岸にはよくあるが、他ではあまり見ない。気がする。

光と闇。

吹雪。

夕焼けと海岸。

流れ雲。

また水平線。

稜線。

霧。

雲の合間。

島々。

牡丹雪。

ワープワープワープ。
肌色に広がる青緑の滲みがなんとも美しい。

おそらくこれが選定後。記憶が定かではない。
他にもいい石があっただろうに。

こんな石も拾っていた。
うねり石。
なんだか拾いすぎた気がする。
そんなことよりも、作家さんの石はどうなんだ。
作家さん、石を、見せてください。石を。
!!!!

美しい…。
これが、初めての石拾い、そして初めての海岸…だと…。
目の当たりにしていても、信じられない。
まず数が少ない。これは、自分の中で石拾いの基準がはっきりしていないと難しい。そしてこの海岸で、この静かな石のチョイス。
水玉、青緑のわかりやすく派手な石はあえて拾わずに、淡いグラデーションや滲みのある繊細な色彩の石たちを、そして全体で調和がなされている。

緑基調に白の線が儚く走る。

白と黒の曖昧な同居が美しい。

粒子感のある薄いと濃いの抹茶色。

白基調に散らばる微かな黒が美しい。

霞んだ緑。ああ。

霧ががかった湖畔のよう。
この石が一番好きだ。
いや、もう、いちいち全部言語化する必要はない。
そして、もうひとつ、石を拾われていた。

いい。めちゃくちゃいい。
欲しい。
作家さんは穏やかに言った。
この石、私の拾った石たちの中では強すぎるので、差し上げます。
ぐぐ、ぐぐぐ、ぐあー。
あー。
いただいて、いいのでしょうか。
私に石のプライドなど全くなかった。
ありがたくいただきます。

というわけで、十二石にも仲間入り。
作家さん、あなたはたった一回の石拾いで、どこまで高みにいってしまわれる。
強く優しい石選定をあざやかに披露し、私に石を与えて去って行く。
ああ、気づけば十年。私の石修行とは何だったのだろう。
思えば、石拾いは回数を重ねたところでまったく上達していない気がする。少なくとも私はそうだ。むしろ、いい石が拾えなくなってきている気さえする。
これは勘違いなのかなんなのか。
やはり雑念がそうさせているのか、それとも、初めの頃は新鮮な気持ちで石を拾えたからなのか、昔に拾った石の方が、思い出が美化され、よく見えているのか。
わからない。もう何もわからないです。石神様。
そろそろ帰りましょうか、と作家さん。
はい。
選定後、とぼとぼ海岸を歩きながら、見つけた石があった。

淡い空、ぼんやりと流れる雲。
いいかもしれない。
偶然見つける、そんな石が一番良かったりする。
作家さん、またいつの日か、お会いしましょう。
それまで、石拾いはほどほどに。
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