三重の海の夕暮れ時、石好きの人と最後の石拾い |思い出その百二十六の五|

2023年4月8日。
三重のある海岸近くの道の駅にて、石のおじいさんとの出会いがあった。
日が暮れてきたので、思い残すことがないように、最後の石拾い。

石拾いの旅|三重県の海岸

なんだかけっこうもう暗い。

日没前の石拾いは、当然難易度が高い。今までの経験としては、サラブレッドKとの新潟での石拾い、多摩川での石拾いくらいだろうか。

もう帰らなくてはいけない思いと、まだ拾い続けたい思いが混じり合う。じんわり心に沁みる石拾いの時間。

こう見ると、まだまだ拾える光の具合。
この程度であれば、夏の昼間照りつける太陽の反射を目に受けながら拾い続けるよりは拾いやすいのかもしれない。

それにしてもモノクロな石たち。
ここから面白みのある石を探す。

石好きださんは一体どこにいる。見失ってしまった。
石と影に溶け込んで石になってしまわれた。

今回の石拾いでわかったこと、それは、私の石拾いへの集中力は石好きださんのそれと比べるとごくわずかなものだということだ。

石好きださんよーい。

ざざざーん

とてもドリーミーな空色。

静かな石拾いの時間が心地よい。

こんなことをふと思った。

旅先の宿から歩いてすぐの海岸に、素晴らしい石ころがあって、朝から波打ち際を散歩をしたり石拾いをして宿に持ち帰り、温泉があれば入って朝ごはんを食べて、絵を描いたり、また石拾いをして、ほんの少し謎の石仕事をして、昼ごはんを外で食べたら散歩して、夕方まで石を拾って宿に持ち帰る。温泉に入って夕ごはんを食べて、嗜む程度の酒を飲みながら、洗って乾かした石を並べて眺める。その日撮った写真を整理しながら、少し日記を書く。外に出て月と星を見て、寝る。
何泊かしたら、次の宿に行く。

そんな日々を送りたい。

まだまだ遠いがいつかそうなる。

と思う。

ころころころ〜

どんどん日は落ちていく。

空も海も石も暗くなって、境界が曖昧になる。
自分以外誰もいないこの海岸で(石好きださんいる)
いつまでこの石を拾うという謎の所業を続けるかの葛藤と、
まだまだいてやれという思いが重なる。

この状況、非現実らしさのある現実が心地いい。

原始時代では日常だったことも、(いや石拾いは堕落した人の行為である可能性の方が高く、いまでも少し通づるが、なぜかそれもまたよろし。)
意味や価値に重きを置くこのつくられた世界では、非日常として感じられる。

今の人たちはこれを現実逃避と呼ぶかもしれないが、それこそまさに現実逃避なのかもしれない。

ころころころころ。

石好きださんよーい。よーい。よーい。

よーい。

こんな感じの石を拾った。
石よりも石を拾う時間を味わった。

ああ、

あああ、

あー
意識が石世界と溶け合ってきたころ、そろそろ帰れと石神様に言われた気がした。

そうしたら 石好きださん 現れた。

ずっといたんですね。

はい。

石好きださんの石。暗くてよくわらんが、それでいいのだ。

ぴょろ雲。

ぴょろぴょろ。

さーてさてさて。帰りますか。

ここから石好きださんに名古屋まで送っていただき、石好きださんはさらに北へと消えていく。日本各地の石をのせて。感謝と無事を祈ります。

石好きださんは、石とまっすぐ向き合って、強さと不思議さを併せ持ち、石を拾う人のイメージにあまりにもあてはまりすぎる、あてはまりすぎてちょっと心配になる程。「石好きだ」をそのまま体現しておられる方だった。

海で拾った石|三重県の海岸

拾った石はこんな感じ。私はなんだかもう、つかれてしもうた。

何も書かず、写真を置いていく。

ありがとう、さようなら。

また会う日まで。

石の人の石の本。「海辺の石」。
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