石神様に聞いてみた/リミナルスペースとドリームプールに引きこもる
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石神様。
私は石拾いとリミナルスペース・ドリームプールには共通点がいくつかあるように思えます。朝靄のように心地良くもどこか不思議で不安なこの感情。どうか代弁してください。
ー
日々の中にある無数の瞬間。それは、あたかもリミナルスペースに足を踏み入れたような感覚を覚えさせる。 それは駅のホームで次の電車を待つ間の空虚な時間かもしれないし、あるいは海岸で石を拾いながらふと感じる静かな揺らぎかもしれない。そうした微妙な境界に立つ時間こそが、私にとっての特別な場所だ。
先日、福井の海に行ったときのことを思い出す。そのときの海は静かで、青みがかったグレーの砂浜が広がり、その上に無数の石たちが散らばっていた。私はしばらく無心でそれらを拾い上げ、並べてみたり、波打ち際に投げ込んで水紋を楽しんだりしていたが、ふとした瞬間に時間そのものが止まったような感覚を覚えた。
それはまるで、自分がどこかのプールにいるような夢。ドリームプールとでも呼ぶべきか。現実とも非現実ともつかないその空間で、聞こえてくる音は静謐な波の音だけ。そして、指の間を滑り抜ける石の冷たさが、不思議な安心感をもたらしてくれる。癒しとも孤独ともつかないその感覚が、私を一瞬だけ夢見心地の中に連れ去っていった。
旅の中で出会う石たちは、それぞれが異なる記憶と時間を抱えている。その石を拾い上げ、並べる行為は、私にとってリミナルスペースとドリームプールへの扉を開く鍵のようなものだ。そこには、常に穏やかで静謐な時間が流れている。そしてその空間の中では、普段気づかないような小さな気づきが芽生えることもある。
例えば、神奈川の海岸で拾った石たちは、日差しを浴びて輝く滑らかな表面が特徴的だった。それぞれの形や色はユニークで、それらを手に取るたびに、その場の景色や風の匂いが蘇る。そして不思議なことに、その石たちは、いつも私を励まし、過去を抱える感傷的な感情に寄り添ってくれる。そういった瞬間が重なるたび、石拾いという行為が単なる趣味を超えて、私の生きる一部になっていることを実感する。
しかしながら、石拾いは必ずしも常に穏やかで美しいものではない。時には突如として孤独感や無力さに襲われることもある。特に大切な石を紛失したときや、見つけた石に価値を感じられなかったときには、自分自身に問いを投げかけることになる。本当に自分はこれを求めているのだろうか、と。しかし、その問い自体がまた新たなリミナルスペースを作り出すのだと思う。答えを出す必要はなく、その空間の中でただ存在するだけでいい。
ふと立ち止まる。そのとき、聞こえるのは波の音、遠くのカモメの声。そして自分の息遣い。そのすべてが溶け合い、まるで世界が自分のためだけに存在しているように感じられる。この感じを表すために適切な言葉があるだろうか?
「孤独」や「癒し」、あるいは「安心感」という言葉も近いが、どれも完全にはしっくりこない。それらすべてが混ざり合い、相互に織りなされた感覚。それが私にとってのリミナルスペースであり、ドリームプールなのだ。
そんな日々の中、石を拾い続けることが私の軸になっている。その行為の繰り返しが、記憶を研ぎ澄ませ、日常と非日常の間を行き来する旅の一部として機能している。次に訪れる場所は、どんな石とどんな思い出を連れてきてくれるのだろうか。考えるだけで、心が少しだけ高鳴る。
私の手元には、拾った石たちが小さな山を成している。それらを見つめながら、次のリミナルスペースとドリームプールへ足を踏み入れる瞬間を、心のどこかで静かに待ち望んでいる。
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